任命拒否について菅首相には直接的な責任がなく、間接的に責任を問われます。

 (毎日新聞2020年12月11日 19時05分(最終更新 12月11日 19時05分より)

 内閣府が示した資料は、手書きで「R2・9・24」(令和2年9月24日)、「外すべき者(副長官から)」と記され、その他の部分は黒塗りだった。内閣府は「副長官」とは杉田氏のことだと認めたという。9月24日は任命拒否した決裁文書の起案日。野党は11日の理事懇で、黒塗り部分の開示を求めたが、内閣府は「お答えできない」と応じなかった。任命拒否された6人の名前などが記されているとみられる。

日本学術会議から推薦された新会員候補6人を菅義偉首相が任命拒否した問題で、内閣府は10日、杉田和博官房副長官が除外に関与したことを示す経緯文書を参院予算委員会の理事らに示した。杉田氏の関与が公文書から裏付けられたことで、立憲民主党など野党は11日の参院予算委理事懇談会で、杉田氏が国会に出席して経緯を説明するよう改めて求めた。

 6人の除外を決定した経緯文書については、内閣府が保管していることを、11月5日の参院予算委で加藤勝信官房長官が認めていた。ただし、加藤氏は「人事に関する記録」を理由に提出を拒否し、野党が開示するよう求めていた。【堀和彦】

菅首相自身は直接関与していないので、誰が主体になっているか

 単刀直入に言いますと、学術会議の任命拒否の件では菅首相は直接的な責任はないでしょう。菅首相本人の話では既に6人が排除されたリストを以て決定しているので、直接的に排除するという意思決定はなされていません。
 問題なのは、すでに対象者が排除されたリストが菅首相に渡っているということで、そのリストを作るに至って誰が関与したかということが問われてきます。

 では、誰がそのリストを作ることに関与したのか。その人物とは、杉田和博官房副長官です。第二次安倍内閣より長らく官房副長官として重用されていますが、この方は警察の公安警備を出身としていて、国民の思想信条を監視する職務にあたっていた方です。しかも内閣人事局長を兼任し、人事を支配する立場にいます。
 この方が関わっていることについては菅首相自身も認めている所です。(東京新聞より)

杉田和博氏が関わることの問題とは

 官房副長官の杉田和博氏が従前関わっていた職務というのは、体制維持のために政府にとって不都合な変革をもたらすような思想信条にかかる監視なり、調査なりをしてきた警察庁警備局(公安課)。そこで辣腕を奮っていたことが問題の中枢にあると言えます。この案件もやはり、官邸側の指示というより官僚が官邸側を察して先回りしている忖度による行動の一つではないかと見ます。

 そのような人物が仕切ってあらかじめ排除対象をピックアップしているということから、任命拒否の理由自体が思想信条などにかかる部分が大きいと推定できるわけです。
 この他にも実質的には安倍晋三前首相の院政体制といえる菅政権にとって不都合な存在だったり、不都合なことをされた報復で排除されたりもするようです。

 例えば、リテラの記事によりますと東京大の宇野重規教授が排除された理由は成蹊大学の恩師にあたる宇野重昭の子息という理由が有力と考えられます。
 実は宇野重昭氏からは度々批判をされており、その報復として子息の宇野重規氏に及んだのではないかと推測できます。
 忖度の部分ももちろんありますが、杉田氏からすれば自らを重用してきてくれた安倍晋三の威光を削ぐ者に対する敵意のようなものを感じます。

官僚に動いてもらおうという人選と管理責任を問うべき

 菅氏本人の弁からすれば、杉田氏によって事前に6人が排除されたリストに基づき追認したに過ぎないという見解ですが、それが妥当でしょう。杉田氏は国民の思想信条を監視するということに徹するという公安警察の職務にあたっていたことで学術会議の候補者の個人情報や素性なども調査し、その6人がおそらく思想信条に問題ありとしてあらかじめ排除するよう手を打っていたのです。

 杉田氏を任命した安倍前首相、菅首相の意図とは明確で思想信条を理由とした人事介入にあります。このような人事介入を行うのは、失脚を恐れるあまり猜疑心が強くなっているということです。杉田氏であれば直接指示しなくてもその辺を察して先回りして動いてくれると期待しての任命だったと考えられます。

 菅首相に責任を問われるとすればあらかじめ首相が意思決定する前にあらかじめリストから勝手に排除し、菅首相に届くように手配をした当事者にあり、すなわち杉田和博氏を任命した責任に尽きます。
 杉田和博氏が関与したと菅首相が認めている以上、その経緯や理由について実際に主導した者として明確に説明する責任が問われます。
 また、菅首相が直接指示しているわけでもなく、先回りして突っ走っているということであれば、官僚の先走った行動を止められなかった、いわば部下に対する「管理責任」を問われることになります。

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