大阪で維新が席巻するのは大阪府民が「いらち」な性格なのが原因か

やはり大阪府民は待つことができる時間が他県に比べて短い

「あいつは『いらち』やから」。関西に住んでいるとよく耳にする会話だ。「いらち」とは関西地方の方言。「せっかち」「気が短い」という意味で関西人、特に大阪府民の性格を表す。ただ社内を見渡せば関東出身のいらちな先輩もいるが、なぜ大阪府民だけがいらちと呼ばれるのか。そもそも大阪府民は本当にいらちなのか。探ってみた。

JR大阪環状線福島駅から南に歩いて数分。現在大阪で最も人気が高いラーメン店の一つといわれる「燃えよ麺助」があり、店の前には順番を待つ客の行列ができていた。藤本泰武店長は「最も忙しいときは60人近く並び、最大で1時間半くらい待つこともある」と話す。ラーメンを食べるために待てる最長の時間と出身都道府県について行列に並ぶ客に聞いてみると、8人が取材に応じてくれた。

60分(宮城県)。60分(愛知県)。30分(大阪府)。30分(大阪)。30分(和歌山県)。30分(大阪)。40分(大阪)。60分(和歌山)。

やはり大阪府民は待つことができる時間が他県に比べて短い。ついでにユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)の人気アトラクションなら何時間待てるかと聞いてみると、「カネで時間(エクスプレス・パス)を買うわ」(大阪府出身の女性)と笑顔で答えてくれた。

いらちという言葉はどのような成り立ちがあるのだろうか。辞書を引いてみると、「せっかちもの、落ち着かない人。例・あいつは、イラチや」(関西ことば辞典、ミネルヴァ書房)とあった。

関西弁に詳しい北海道大学の山下好孝教授にいらちの語源を聞くと、「現代語の『イライラ』と関係があると思われ、『イライラ』と『イラチ』には音声的にも共通点がある」と教えてくれた。大阪府民がいらちと呼ばれるようになった理由については、「大阪府民が新しいことを何でもすぐやってみたいと思う性質と関連しているのではないか」と話す。

インスタントラーメン、動く歩道、回転ずし、レトルト食品……。調べてみると確かに、大阪発祥のイノベーションは多い。

回転ずしは、「元禄寿司」を展開する元禄産業(大阪府東大阪市)が1958年に「旋回式食事台」と呼ぶベルトコンベヤーを店舗に導入したのが始まりだ。当時大阪では立ち食いずしが流行し、多くの店舗が乱立していた。働き手不足で人件費が高騰。来店客に対し、効率的にすしを提供できる方法が求められていた。創業者の白石義明氏はアサヒビールの吹田工場で見学したビール瓶を流すベルトコンベヤーからヒントを得て回転ずしを発明した。

元禄産業の担当者は「背景に『いらち』が関係していたかまでは確認できないが、結果的に『パッと食べて、パッと帰る』という大阪人の気質に合っていたのかもしれない」と説明する。

1967年、阪急梅田駅に設置された「動く歩道」も日本初だ。JR大阪駅の南側にあった梅田駅が北側の現在の位置に移ったため、駅から百貨店の間に距離ができてしまった。阪急電鉄は利用客の歩く負担を減らすために動く歩道の導入を決めた。こちらもいらちとの直接の関係は確認できなかったが、サービス向上のため、新しいものを積極的に取り入れる関西人気質から生まれたようだ。

梅田駅の外に出ると広い横断歩道があり、大阪府民がいらちとの評判を世の中に広めた有名な待ち時間表示付き信号がある。ここが表示付き信号の発祥かは分からなかったが、青信号に変わり大勢が速足で渡り始める姿をみていると、大阪府民はやはりいらちだと感じた。

(千葉大史)

日経(2019年7月16日)より

大阪府民はスピード第一?

大阪発祥のイノベーションの共通点は「スピード化」

 前掲の記事から見ると大阪発祥のイノベーションの共通点にあるのは、数分だけ待てば食べられるインスタントラーメン、動く歩道を歩けば更に早く移動できる、「時短」であり「スピード化」です。早く食べられる、速く移動できる。『パッと食べて、パッと帰る』の延長線で回転寿司、レトルト食品も時短ツールになっています。ここで一つ気になる所がありまして、妙に時短やスピード化にかかるイノベーションが多いように思います。

 そこでキーワードになるのは「スピード」です。とりわけ維新の人たちは、「スピード感」という言葉をよく使います。橋下徹はもちろんのこと松井一郎も吉村洋文も頻繁に使う言葉。なぜこの言葉を多用するのでしょうか。

大阪の人は気が短く待つことが苦手

 先述の引用記事からも分かるのは、大阪の人は他の地域に比べ待つことに対して耐えられないように見受けられます。このことからすぐに結果を求める性急な性格があるのではないかということが見えてきます。創始者の橋下徹をはじめとした維新の人たちは大阪の人のそういう性格を巧みに読み取って「スピード感」を強調していると見ます。

スピード感さえあれば何でもあり?

維新の作り出したスピード感とは

 しかし、源流の橋下徹が作り上げたスピード感とは、議会制民主主義を否定した首長によるトップダウンによる体制によって生み出した「ショートカット」によるスピード感。極力議会での議論をさせないことで意思決定の短縮を図っています。

 基本、大阪府も大阪市も首長が即断即決、議会は素通りです。維新の議員はいかに無風状態で形だけの議決をしていくかというのが役割をになっているので、強行採決するためにとにかく頭数いればよいという事になります。頭数だけ揃えれば事足るため候補者の人選においても資質の面では相当に問題があり、所属議員の不祥事も後を絶ちません。

維新からすれば本当は議会はいらない

 法的な面で議会を置いておかなければならないので存続していますが、時間のかかってしまう議会など要らないと思っているのではないかとさえ感じます。基本的に維新の戦略は『時間のかかる議論を回避してトップダウンで物事を決めることで意思決定の時間の短縮化を図る』ことでスピード感を実現しています。
 慎重な議論をすっ飛ばして即断即決ですぐに結論が出すことで、待たされることを嫌うその「いらち」な性格をよりよく手玉に取ることができることが大阪で維新が躍進する原因ではないかと考えられます。

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